―ラムサール条約登録を目指して―
三重県中部、津市から松阪市にかけての海岸には豊津浦、町屋浦など自然の砂浜海岸が多く残されています。これは工業化の進んだ伊勢湾岸では珍しいことです。また、ここに注ぐ、雲出川河口から櫛田川の河口にかけては広大な干潟があります。また、安濃川河口には広い砂州があります。この海は豊かで、コウナゴ(イカナゴ)漁、アサリ採取、青のり(ヒトエグザ)養殖などの漁業も盛んです。また、潮干狩りでも多くの人々が楽しめる場所です。しかし、それだけでなく、野鳥をはじめ多くの貴重な動植物の生息の場でもあります。
この海岸、干潟に飛来するシギ・チドリ類は数多く、貴重な種も多くみられます。とくに、ミヤコドリ、ミユビシギの飛来数は多く、日本国内でも有数な生息地になっています。シギ・チドリ以外でも、ズグロカモメ、コクガンが毎年越冬します。また、砂浜海岸ではシロチドリが卵を産み、雛を育てています。さらに、セイタカシギの繁殖例もあります。
ミヤコドリ、コクガン、ズグロカモメについては当会独自のミヤコドリカウントプロジェクトで毎冬伊勢湾西岸全域を対象として個体数を調査しています。また、ミユビシギについては環境省のプロジェクトに参加し、個体数を調査しています。
この中勢海岸は環境省が示す、ラムサール条約への登録の基準を十分に満たしており、登録湿地の候補地になっています。我々日本野鳥の会三重はこの海岸をラムサール条約に登録し、重要な場所として守ってゆきたいと思っています。当会は2013年4月10日津市、松阪市に対して中勢海岸の保護とラムサール条約登録へ活動を始めるよう申し入れました。しかし、その後自治体のめだった動きは未だありません。
ラムサール条約は経済活動に伴う、開発や改変から世界の湿地を守るための条約で、1971年にイランのラムサールで採択されました。日本もこの条約に加盟し、現在では国内の46か所の湿地を登録しています。近県では琵琶湖、名古屋の藤前干潟、愛知県の東海丘陵湧水湿地群、福井県の三方五湖、敦賀の中池見湿地、石川県片野鴨池などが既に登録されています。日本の各地で追加登録の動きがあります。