木曽岬干拓地のさらなる開発の危険
本年(2017年)7月、三重県の木曽岬干拓地担当者の話によると三重県のプロジェクト[木曽岬干拓地整備事業]に沿って干拓地のさらに南部を開発予定とのことです。そのために新たにアセスメントを実施する予定であるとのことです。前回のアセスメントでは173.7 haが対象となっていたため、残りの部分を対象としたアセスメントになります。アセスメントといっても前回のアセスメント(2001年―2005年)の事後調査が行われているため、今回は実地調査等を省略した簡略なものになる可能性も否定できません。
木曽岬干拓地とは
木曽岬干拓地は三重県と愛知県にまたがる443haの干拓地で、東海地方ではただひとつのチュウヒの安定した繁殖地です。もともと木曽川河口の干潟を堤防で囲み、排水してできた農業用地ですが、農地への転用が無理と判断され、原野のまま放置されました。その後、三重県により、アセスメントが2001年度から行われ、北部に盛り土をし、ストックヤードは野外探検広場等になっています。さらにその南にはメガソーラーが設置されました。それでもチュウヒはその後もそれらの施設より南の原野部分で繁殖しつづけています。 こちらの記事も→木曽岬干拓地問題
木曽岬干拓地でのチュウヒ繁殖の現状
これまでの調査では木曽岬干拓地でチュウヒは最大3つがいが繁殖に成功しています。現在木曽岬干拓地のチュウヒは近年、北部が工事中あるいはメガソーラーになったので、其れより南部の原野で繁殖しています。この部分は上記整備事業の開発予定地域です。三重県はさらに干拓地南端にチュウヒ保全区と称して遊水地、葦原などを作りました。三重県は木曽岬干拓地アセスメントの準備書の公聴会で、保全区で3つがいの繁殖が可能と言いましたが、実際はその後、保全区では一度も繁殖していません。ですので、保全区以外は開発して良いとの論理は通らないことは明らかです。当該干拓地のさらなる開発はチュウヒの繁殖を全く不可能にするものと判断されます。
日本におけるチュウヒ繁殖個体群の現状
チュウヒは、現在環境省の「絶滅の恐れのある種の保全法」で、指定種にランクアップされようとしています。これはチュウヒの営巣期における国内の繁殖つがい数が 80~90 つがい、個体数は 300~450 羽(環境省編 2014、)と推定されており(環境省編チュウヒ保護の進め方)、環境省レッドリスト 2015 においては絶滅危惧ⅠB類に位置づけられています。
さらにかつてチュウヒが多数繁殖していた石川県河北潟でも繁殖が困難になり、岡山県の塩田跡地のように開発により繁殖できなくなった場所も多数あることを考慮したものと考えられます。
私たちはこれ以上の木曽岬干拓地の開発に断固反対します。
このことは日本で国を挙げてチュウヒの繁殖を守ることが必須になっていることを示しています。しかし、三重県はそれに反して、干拓地のチュウヒ繁殖地を開発しようとしているのです。私たちはこれ以上の木曽岬干拓地の開発に断固反対します。
三重県のプロジェクト[木曽岬干拓地整備事業]を全面的に見直し、木曽岬干拓地の未開発部分全面をチュウヒの繁殖地として保護する計画を新たに策定すべきです。